2017年5月13日土曜日

修論(Dissertation)

先日修論をようやく出し終えました!!!

自分の興味あるテーマを選択したのでリサーチ過程は(もちろん大変でしたが)どちらかといえば楽しく、知識として学んだこともたくさんありました。しかし、MPAは2年プログラムで修論の締め切りがテスト前にあるので、それがかなり大変になるかと思います。

MPAにおける修論の位置づけ

◎  選択科目
MPAでは修論は必修ではなく、前期履修登録期間に決めなければいけません。修論は1単位( Policy Paperは0.5単位)なので、修論を書かない人はその代わり授業をとります。

決め手としては「修論で深めたいトピックがあるかどうか」「授業で履修したい科目がどれだけあるか」だと思います。

私は書きたいテーマが何となく決まっており、授業で深められそうな科目がなかったので、修論を書くことに決めました。また経験したこともなく、単純にどういうものなのかという興味がありました。あとは、修論を書くプロセスは、アプローチ方法やスケジュール等々、自分で全て決められて自由度が高いのも魅力的でした。私は決められたものをなぞることよりも、自分で試行錯誤する方が性に合っている様だと、LSEで再認識しました。。。


◎  Policy Paperと修論
Policy Paperは0.5単位で6,000ワードなのに対し、修論は1単位で10,000ワードになります。Policy Paperは政策課題を特定、分析して提言等を示すことが求められますが、修論はもう少しアカデミックの色が強くなります。具体的には 政策の礎となっている学説のレビューや、それに対しての示唆の提示、またそれらの根拠として実証的リサーチ(定量、定性は問いません)が求められます。

Policy Paperの方が分量も少なく一見楽に思えますが、リサーチ過程である程度の学説のレビューは必要になるのと、6,000ワードにまとめるのが案外大変そうだと友達を見ていて思いました。このあたりはリサーチクエスチョンの設定方法や性質も関連してきそうなので、迷う人はAcademic AdvisorやTutorに相談したら良いかもしれません。


◎ サポート体制
年間にSeminarが6回あり、相談相手としてはMPA専属のTutorとSupervisor (Academic Advisorと兼任)がいます。詳細に書いたGuidelinesも配布されるので、それをきちんと読めばSeminarの内容はカバーされるように思いました。Seminarは抽象的なガイダンスが多いので、むしろ特定の質問があれば直接Tutor やSupervisorに相談した方が的確なアドバイスがもらえると思います。

Supervisorとの面会の頻度は個人に委ねられており、Supervisorのやる気はまばらです。ちなみに私の担当は、修論のSupervisorをやることを認識していなかったうえ、生徒 / 教えることへの興味がゼロの様に感じました笑。(アポイントメールも2回に1回の返信率)Office Hourに行って相談しても興味が全く無さそうなので、途中から行くのをやめてしまいました。。

その代わりに私はTutorとResearch Assistantとして手伝っていたDrの先生に主に相談していました。友達の中には自分が書くテーマに精通している教授に連絡とって相談に行っていた人もいたので、自分が相談しやすい人を見つけられればSupervisorにこだわる必要はないと思います。


1年間の流れ

◎ 前期
12月1日にProposalの提出をします。主にResearch Question、Literature Review、分析手法の提示が求められ、成績の10%をしめます。この後のテーマの変更はSupervisorとの合意の上となっています。(私は到底無理でしたが)この時点でLiterature Reviewに目処がつき、リサーチ手法のの現実可能性等も把握できていると、後期が分析に集中できて スムーズだと思います。


◎ 冬休み
宿題等はありません。私は日本の政策を扱っていたので、一時帰国した際に関係者に話を聞きに行ったり、データの入手可能性を確認したりしました。フィールドリサーチはMPAの修論では求められていませんが、もし行う場合は(後期がCapstoneで相当忙しくなるので)この冬休みにしておいた方が良いと思います。


◎ 後期
本来は分析に重点を置く期間です。ただ私の場合はLiterature Reviewが全然終わっておらず、またプロポーザルのFeednackにTheory(現学説)へどう貢献できるかの観点が弱いと書かれていたので、最初はそこに重点をおきました。

また前期に全く時間を確保しなかった反省をいかし、友達と週1回一緒にワークする時間を決めて取り組み、週4時間ぐらいは確保していました。しかし、Capstoneが忙しくなった2月後半〜3月前半の1ヶ月は修論にほぼ手をつけられないので、実質後期は1ヶ月半ぐらいしか時間ないと思います。

私の場合はCapstone終了(3月10日)〜修論提出日(4月25日)の1ヶ月半が勝負で、修論の80%をこの期間で取り組んだと言っても過言ではありません。そして最後の2週間ぐらいは夢に中でもリサーチをしてうなされていました笑。


◎ 春休み
平均すると毎日6~7時間ぐらいは修論に取り組んでました。途中想定していたデータが入手不可能になったり、インタビューを進めていくうちに想定していた分析手法が適当でないことがわかったり、修論のテーマにぴったりな新たな学説が見つかりLiterature Reviewの構成を大幅に変えたりと、紆余曲折を経ましたが何とか提出し終えました。

修論は長いので文法の間違えや意味不明な文章が少しでもあると致命的だと思い、Proof Readingを利用しました。本当の締め切り前に一旦書き切る目安を作るのは私の性格にはすごく良かったです。それでも全部は書ききれず85%ぐらいを書ききった状態で提出。結果的に、意味不明な文章を何点か指摘してもらい、また適切な言い回しへ変更されたりして、利用して本当に良かったと思いました。


将来書くかもしれない人へ

◎ 前期の過ごし方が大事
後期はCapstoneにほぼ時間が拘束されるので、前期にどれだけ進められるかで、後期や春休みの過ごし方とプレッシャーが変わってくると思います。修論はテーマ設定等ゼロから構築するために想定より時間がかかるし、必要な情報を洗い出してデータ等の情報の有無が確認できるまで方針を変更せざる可能性が常にあります。よってこのあたりを前期までに固めておくと後期が精神的に楽だし良いアウトプットができると思います。


◎ インタビューのすすめ&読んでもらいたい人を作っておくこと
リサーチメソッドの種類に関係なく(定量的・定性的)、可能であればステークホルダーにインタビューできると良いと思います。私の場合は日本の「地域おこし協力隊」という政策評価モデルに関する論文を書いたのですが、協力隊の方々に実際にインタビューをする機会をいただきました。自分が文献から抽出した問題意識の妥当性、それに関する私の提案が的を得ているかについて意見をいただき、自分が見えていなかった点を指摘いただきました。

また人と話すことで自分の論文の意義や、誰に届けたいのかも明確になり、それが書くモチベーションにもつながりました。せっかく書くなら、学業評価のために書くよりは、自分の論文をもしかしたら活かしてくれる人のために書く方が楽しいですよね。


◎ 根拠の積み重ねが命
アカデミックの強みでもあり弱みでもありますが、自分の主張にどれだけ説得性を持たせられるかが全てだと思います。だから非連続的な(に見える)発見や主張は評価されません。いかに多種多様な角度からの分析とエビデンスを組み合わせることで主張の妥当性を確保できるかが大事です。

何が言いたいかというと、リサーチクエスチョンをかなり限定的にしてスコープを絞らないとエビデンスを積み重ねることが難しく、字数制限もあるので壮大なテーマは書きにくいと思います。

また、あくまで過去の現象・事象を客観的に分析してエッセンスを抽出することに命をかけているので、ぶっとんだ発想や直感的・信念的なものはいくら面白くても根拠を示さないと評価は全くされないでしょう。ビジネスは非連続的な発想や信念的なものも大切にしますが、論文は評価基準が全く違います。(著名人クラスになれば別だと思いますが)。私はこのあたりをきちんと認識しておらず、リサーチクエスチョン選択の段階でTutorと話していて再認識させられました。


◎ 編集の時間を多めに見ておくこと
時間の都合上、分析を進めながら論文を書いていたため、想定シナリオと違う分析結果が出てきたり、また新しいエビデンスを発見したりすると、当初のロジックと変更しなければいけないことが数回ありました。また書いているうちに内容が重複していたり、また流れをスムーズにするためにコンテンツの挿入箇所を変えたり等も必要で、編集は多めに時間を取っておいた方が良いと思います。

私は一回書き上げた時点で約4,000字オーバーだったこともあり、再読しながらの文章校正、エビデンス追加、フォーマット修正に5日ほどかかりました。それでも最後ギリギリだったので、1週間ぐらいは見ておくことをおすすめします。

2017年5月8日月曜日

Capstone Project

久しぶりの更新です。

長文になりますが、将来MPAでCapstoneをするかもしれない向けに、下記にポイントを絞って書きます。

1 スケジュールとアウトプット
2 大変だったこと
3 やって良かったこと
4 学んだこと


CapstoneはMPAの2年生の目玉のプログラムです。10月〜3月までの6ヶ月間をかけてクライアントに与えられたプロジェクトをグループ(4~5人)で遂行します。このグループはMPA Officeが生徒の出したPreferenceを考慮してランダムに割り当てられます。2年目なので大体のチームメンバーは顔見知りのはず。(Dual-Degree Studentsと一緒になった場合はほぼ初対面です)

前期開始時に18のプロジェクトが発表されました。Development、Management、Social Welfare、Finance等の多岐にわたるトピックがあり、パートナーも営利や非営利(国際機関、財団、NGO等)様々です。分析手法も定量的、定性的様々なので、自分の得意不得意に合わせて選択すると良いと思います。

私自身、CapstoneはMPAを選んだ大きな理由の一つでもあり、とても楽しみにしていました。学んだことも多かったですが、その過程で想像以上の困難もありました。とくにグループダイナミクスを理解する最初の数ヶ月と、プレゼンとレポートの締め切り前は大変でした。


スケジュールとアウトプット
6ヶ月間で求められているアウトプットはクライアントへのプレゼンテーションとLSEに提出するレポート(15,000 words)です。内容に関しては、事前にMPA Officeがクライアントと調整しているので、無理難題はないはず。ただ、データの入手可能性によってリサーチの難航度は大幅に変わるので、事前のプレゼンテーション時に確認しておいた方が良いと思います。

私のグループはクライアントに最初に挨拶に行き、その後は1つのステージが終わる毎にプレゼンをしました。よって、パートプレゼン3回+最終プレゼン1回でした。日常はメールでやりとりです。

グループミーティングは最初の2ヶ月は週1回2−3時間のミーティングが基本でしたが、途中からは議論することも増えてきたので週2回に増やしました。冬休みはタスクを割り振りましたが、結局皆忙しくてあまり進められず、休み明けに本格的に再開。

1月下旬から3月9日の提出日までは自分の普段の勉強時間の7割はCapstoneにとられました。他の教科や修論に割く時間が圧倒的に少なくなったので、それを想定して予定を組んでおいた方が良いです。

レポートは2月頭から本格的に書き始めました。まだ分析も終了していなかったので、レポート班とリサーチ班に分かれました。また、ネイティブがいなかったので、Proof Readingに3月1日に提出。結果的にProof Reading前に最低限のレベルまで仕上げ、残りの1週間で何度も読み直し、エビデンスを集めたり等してクオリティーをあげることができました。

それでも提出前日は図書館に朝3時すぎまで残ることになりました泣。他のグループも沢山いたので、最後はそうなるみたいです笑。

大変だったこと
班によって苦労するポイントが異なりますが(グループ内、クライアントとの関係、Supervisorとの関係等)、私の班はグループ内のコミュニケーションが一番大変でした。とくに1年生時のグループワークと比較すると、スコープが広く抽象的議論が多かったのが大きな要因だった気がしています。

昨年の2年生からも「Capstoneはグループが全て」と言われていましたが、本当にその通り。前述のとおりランダムに割り当てられるので事前に仕組むことはほぼ不可能で「運」です。ただ友達とも話していて、コミュニケーションで問題ないグループは皆無だったので、何か起こると思って望んだ方が良いかもしれません。

以下にポイントだと思うことを書いておきました!

◎ 違う意見をどう合意にもっていくか:
私の班はとことん議論しましたが、合意に辿りつくまでの時間と労力を必要以上に浪費していた気がします。しかも私の班は気性が激しいメンバーもいたためか笑、議論のたびにすごいエネルギーを消費していました。家に到着するとぐったり。

その要因としては議論が途中で迷子になったり、また結論が出ていないのに次の議題を話していたことだったので、途中からはホワイトボードを使ったり、またパワーポイントやワードに意見を事前にまとめて議論の可視化に努めていました。

◎ フィードバック(FB)の方法:
「相手が聞く気がおきるフィードバックの伝え方ができるか?」これが想定より難しかったです。例えば攻撃的なFBを繰り返す人がいると、受ける側は防御のために自動的に聞くことをシャットダウンしてしまったり。あとは、個人の中で無意識に「この人の意見は意味あるけど、あの人の意見は意味ない」という姿勢ができてしまって、ある人がいくらFBをしても全然反映してもらえなかったり。等々。いろいろありました。

これを放っておくとグループワークが不可能になります。「仲介役(皆の信頼を得ている人)」に自分がなった場合は、皆の意見を平等に拾って皆が同じテーブルについている感覚を保てるようにすることが重要です。他の人が「仲介役」だと思った場合は、その人にお願いすると良いと思います。

真摯に丁寧に他の人の意見に向き合うことができるのは能力なのだと実感。

◎ クライアントとのコミュニケーション:
クライアントがCapstoneに慣れているか(複数回目もいれば初めてもいる)はプロジェクトのスムーズさにとても影響します。特に相手が初めての場合はお互い手探りなので、彼らの指示を100%信じずに、小さな疑問でもぶつけた方が良いです。

私の班は、Terms of Reference (プロジェクト概要と目的)のゴール設定が曖昧なところがあり、捉え方によっては6ヶ月以内では達成不可能だと判断し、最初に2週間ほどかけて認識を合わせました。結局Terms of Referenceはクライアントと合意の上で最後に書き直しました。

また最後に思ったのは、クライアントのリソース(他の部署や外との関係性)をもっと活用すればよかったということです。クライアントが比較的大きな組織で横の連携が強い訳ではなかったので、こちらから特定の組織や人をお願いしない限りはリーチするのが難しかったです。

◎ フリーライダー問題:
私の班はありませんでしたが、何度か他のグループで聞きました。大切なのはフリーライダーが出たときにどう対処するのかを最初に決めることが大事だったと話していました。(ひどい場合はMPA Officeに報告する等)


やって良かったこと
◎ Supervisorの活用:
各グループにSupervisorが割り当てられます。学校側の責任者です。彼らの役割は明確に定義されていないので、どう活用するかはグループ次第で、頻繁に干渉してくるSupervisorもいれば、ほぼ放置もあります笑。

私たちのグループは各プレゼン前にPPTを送付してFBをもらったり、レポートへのFBをもらったり、リサーチの方向性を相談したりしました。頼んだことを拒否することはしないと思うので要所要所上手く活用すればいいと思います。

◎ Field Interviews:
Literature Reviewが主のプロジェクトだったのですが、私たちが抽出した課題やそれに対する提案が的を得ているか確かめるべく、途中でクライアントにも相談してステークホルダーにインタビューを4件のみ実施しました。結果、課題意識の妥当性が確かめられられ、また想定できてなかった実行プロセスでの問題が明らかになったのでよかったです。

◎ お互いへのフィードバック:
レポートとプレゼンが終わり皆でパブに行ったときに、自然とプロジェクトを振り返る流れになりました。そのときにメンバーの一人が「Yukieは周りにいる人をPositiveな気持ちにさせ、一緒にやりたいと思わせることができる。それって素晴らしいことよ。そして、どの人の意見にも真摯に向き合うことができるのはすばらしい」とフィードバックをくれました。それを発端に、それぞれへのフィードバックタイムが始まりました。

自分の強みって自分には見えにくく、また外国でのワークは日本と環境が違うので自分がどう貢献できるのか悩んだことが多かったので、すごく嬉しく救われました。何度も揉めたにも関わらず、ポジティブなフェードバックを最後にくれる 彼女は素晴しかったです。


学んだこと
◎ InputとOutputのイメージを最初にもつこと
「個人でどれだけの時間/週を確保できるのか、それでプロジェクトの目的が達成可能か」は最初にグループで話し合っておくと良いと思います。私は「できるところまでやろうよ」という意識が強く、費用対効果の意識が薄くなりがちなので、とても勉強になりました。最初から不可能な目的設定はクライアントと交渉する必要があります。(彼らも私たちのスケジュールは知らないので)

◎ Group Workの姿勢
Capstoneは今までのMPAのどのプロジェクトより「Group Work」でした。お互いにフィードバックを重ねアウトプットの質を高めることができたと思います。どこまで相手のワークに干渉するかは難しいと思うのですが、私のグループは1人すごくアウトプットの質にこだわるメンバーがいて(3〜4回同じパートを書き直すことも)、彼女がとことんフィードバックしあう環境を整えてくれたと思います。

◎ Technical Knowledge
テーマであった大学と企業の技術移転に関するトピックと、Randomised Control Trials (RCTs)については詳しくなりました。特にRCTsはEmpirical AnalysisではGolden Rule的な手法なので、今後リサーチ分野の仕事に就けば目にすることも多そうで、今回きちんと勉強できてよかったです。