2016年10月9日日曜日

basta!視察 @Sweden Trip

実はインドから帰ってきてからLSEが始まるまでの間、スウェーデンへ約1週間旅行に行ってきました。













レンタカーをしStockholmやSintra, Uppsala, Örebroにも足を伸ばしてきました。















ほとんどAirbnbに泊まりスウェーデンの自然豊かな住環境を満喫してきました。家の裏庭に湖とDockがあり、カヌーに挑戦したりもしました。
















その中で視察も兼ねてbasta!(「もう十分」という意味らしいです)というDrug Abusersの職業訓練をとおした更生施設(Rehabilitation)にアポをとって見学に行ってきました。森を切り開いたような場所にありました。リハビリ者はごついtatooを入れている人が多く、表情も固い人がいて私も最初顔が引きつりそうになりましたが、挨拶すると皆さん返してくれました。勤務時間中は皆すごくいきいきと晴天の下、楽しそうに働いていました。














スウェーデンではDrug Abuseで捕まると刑務所かbasta!のような更生施設に入って業務をこなすか受刑者は選べるらしいです。1994年に協同組合として設立され、今は職員や更生者含め100名ほどがいるそうです。敷地内にアパートがあり更生者は家族も呼び寄せ皆で共同生活をしています。事業が清掃事業、家具事業、犬の保育園事業等7つあり、昼間の仕事が社会復帰のためのRehabilitationを兼ねています。

興味ある方は詳細は下記からどうぞ。
basta!のウェブサイト(英語)
JA共済総合研究所による研究報告レポート(日本語)

ここでは訪問して自分が印象に残ったことを備忘録として残します。

◎ 運営者も元Drug経験者
説明してくださった女性CEOも元Drug経験者。非常に明るくて聡明な方で、「私も元はそうよ」とカミングアウトされた時は流石に驚きを隠せませんでした。従業員、更生者100名のうち外部から人材調達したのはEngineerの人だけらしいです。「Drug経験者だから・・・」という社会の偏見を見事に払拭するし、更生者にとってもロールモデルがすぐ近くにあることは非常に励みになりますよね。

そして、おそらく支援者、被支援者という構図が生まれにくい。私が東北の震災で働いていた時はこの構図から生じる問題がたくさんありました。例えば支援者側。「何も非支援者に出来てないのではないか?という無力感からくる鬱」「その焦りから頑張りすぎて身体を壊す」「非支援者の気持ちや人生を背負いすぎてしまう」または支援者側。「支援者側は何もわかってないと不満が噴出」「弱者の立場として扱われることから生じる弱者意識や甘え」数えるときりがありません。しかし施設運営側も元Drug経験者で同じバックグラウンドを共有していることは、上記のような立場の違いからくる意識の分断を生まれにくくするのでは?という仮説。

◎ 寄付は受け付けない
更生者のSelf-Esteem(自尊心)を向上させることに非常に重点を置いていました。よって同情からくる寄付は更生者のSelf-Esteem向上の弊害になるということで全く受け付けないそうです。申し出てくれた方には商品を買う等で貢献してほしいとお願いしているそうです。思い切った決断だけど、非常に強い哲学を感じました。

◎ Businessを貫き通せる高い商品品質
上記からもわかるようにBusinessが成り立たないと運営できないビジネスモデルです。施設建設時に複数のコミューン(地方自治体のようなもの)から借金をして初期投資したらしいですが全て返済し終わったそうです。完全にBusinessを貫くだけではなく、「Drug経験者のリハビリ施設」ということをPRしていないとのこと。つまり商品の質が悪いとお客さんが離れていってしまいます。だからこそ、商品の質にはこだわっていることでした。家具製造事業の工場を見せてもらいましたが本格的。家具屋さんで売っていそうな素敵な木工家具でした。

印象的だったのは過去のDrug経験者への偏見をなくすことは長期的なゴールでもあり、その観点からはbasta!の内情をPRしながらマーケティングすることも一つの戦略。その葛藤は今も議論の論点になると話してくれました。

◎ カスタマイズされたリハビリテーション
受刑義務の代わりにbasta!にに勤める年数は1年ですが、平均して大体 3~4年ぐらいbasta!で過ごして社会に復帰していくらしいです。その最初の1年の中で特に決められたリハビリテーションのプログラムはなく、定期的にカウンセラーと話しその時に必要なリハビリをするらしいです。状態チェックのための定期的アンケートは更生者が客観的に自分の変化を捉えるために実施していました。日本の事情を詳しく知りませんが、助成金や委託でないから、カスタマイズしやすいプログラムを提供できる気がします。

またコミュニティでサポートしていくというコンセプトを大切にしていました。家族の消息がわかる人はbasta!が場合によっては連絡をとり家族をbasta!に呼んで一緒に住んでもらいサポートする態勢を整えるそう。社会にでた時に「家族」という身近なサポートコミュニティの存在は再発を防ぎやすいと話してくださいました。

◎ キャリアサポート
上記に関連して社会復帰=仕事を探すということでもあります。よってbasta!にいる間に本人の希望に合わせていろんな事業を経験してもらいながら自分の特性を見つけてもらうということでした。または新たな教育を受けたいので大学に進む人もいるらしいです。今のAccounting担当の人はAccountingを勉強したあとにbasta!に戻ってきたと話してくれました。

◎ リハビリのターゲットを定める
よく福祉分野だと全ての人を救おうとする印象があります。例えばDrug経験者だと、basta!に馴染めなかった人がどうするのか?basta!を卒業した後の社会適応へのフォローはどうするのだ?等々。

その観点においてはbasta!は「施設内で更生しようと頑張っている人に全力を注ぎたい」とターゲットが明確でした。実際最初の3ヶ月で入所者の50%が生活に慣れず(毎朝起きて仕事をこなすという生活リズムを作ることだけでも最初は大変らしい)basta!を離れていってしまうとのこと。包括的なケアはもちろん大切ですが、自分の会社ができる範囲を明確に定めるとい選択の力は大切だなと感じました。

以上おおまかになりますが、感じたこと。


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