2017年7月18日火曜日

ヨーロッパのまちづくりが日本にそのまま当てはまらない理由

20177月に友達と45日で環境都市(特に交通政策を基幹としたまちづくり)として有名なドイツのエアランゲン(Erlangen)・フライブルグ(Freiburg)とフランスのストラスブール(Strasbourg)に行ってきました。

現地での講義は、高松平蔵さん@エアランゲン、Innovation AcademyHongさん@フライブルグ、市役所交通課のベルゼさん@ストラスブールにお願いしました。当日はスライド等を使って現在の取り組みだけでなく、それを可能にした歴史的、社会的背景や取り組みの効果等も詳細に説明してもらいました。(高松さんとInnovation Academyは随時視察を受け付けているようなので、興味あったらぜひご連絡をしてみて下さい)

結論からいうと、「目に見えている表面的な取り組みだけを日本に持ってきても上手くいかない」ということだと理解しました。なぜなら、それが可能になったのは、根底にある人々の価値観、コミュニティの成り立ち、そして地方分権によって培われた都市の自治が大きく影響している印象を受けたからです。

(以下、相当な長文になります)

l   教養市民の存在と蓄積された自治力@ドイツ(高松さん講義)

19世紀の工業化により都市への人口集中が起き様々な社会問題が発生するなかで、秩序を保つために必要とされた都市政策やマネジメントが必要となり、その役割を大きく担ったのが都市官僚と教養市民らしいです。この時代には各都市に憲法(住民の権利などを記したもの)、法典、裁判制度の原型となるようなものも出来たらしく、これらが後世に明文化して伝えられる都市の「物語」の基盤となったらしいです。

さて、都市間での交易が盛んになるにつれて各都市が「われわれのまち」というアイデンティティを強く持ち始めました。その「らしさ」がまちづくりでも大きな役割を担ったらしいです。「教養市民」という言葉はかなり抽象的ですが、私が思うに「文化的そして社会的な教育を受けていて、コミュニティにとって何が善悪なのかの区別がついた市民」のことだと思います。よって、都市官僚と教養市民が中心になったまちづくりでは、どのような社会インフラ、産業、そして文化を育むかについての共通認識が高い「教養」レベルで擦り合わせがとれていたらしいのです。


l   まちづくりにおける社会的・文化的・経済的なバランス

そもそも三都市において共通している交通政策は、中心地への車の乗り入れを禁止しトラム(LRT)を導入することでした。引き金となったのは1960年代の経済成長とそれに伴うモータリゼーションによって生まれた弊害に対する危機感。1970年代には環境問題やコミュニティの分離に対する運動が起こりました。それから都市の過去の物語の再発見への意識も高まり現在の都市はその上に構築されるようになります。例えば以前からまちの中心であった教会の周りは駐車場という土地使用ではなく、人が集う場所にしようということで車の乗り入れが廃止されました。そして人が集うことは結果的に経済的効果ももたらします。このような意思決定の際に、環境的な要因だけでなく、社会的、文化的、経済的要因がバランスよく考慮されている印象を受けました。

友達と話していて面白かったのは、日本だとまちづくりの際に経済的価値に一番の比重がおかれがちで、社会的、文化的価値が軽視されがちだということ。一方で例えばストラスブールの話だと、トラム経営は数字だけみると赤字だが(運賃収入53%, その他収入4%, 補助金や企業への地方税43%)、環境的、社会的、文化的ベネフィットを合わせると継続する価値があるという風に認識しているように感じました(はっきりとはおっしゃっていませんでしたが)。確かに中心地にいってみると、その活気と心地の良さに「なるほど」と思いました。

ストラスブールのノートルダム大聖堂前の広場。数十年前は車中心の広場になっていたが、今は人通りが絶えない場所に。 


ノートルダム大聖堂の上からの眺め。


l   「場」を大切にする価値感

日本では何か(イベントを)しないと人が集まらないと思いがちですが、こちらでは居心地の良い場であれば人が集まってきます。ヨーロッパでは芝生に人が寝そべっている光景をよく見ると思います。この「居心地の良い場」は多目的用途として使われています。ある日は人が集まりリラックスする場であり、ある日は政治キャンペーンやデモに使われたり、また違う日はNPO集会や活動の場になったり。その場の存在が市民の生活の質を高めるという共通認識があるようです。

だからこそ、人が集まれる場を車の駐車場にしてしまうのでなく、社交の場として残しておこうという意思決定が働いたようです。これは芝生のような公園の場所に限らず、劇場やミュージアム等も同様です。例えばエアランゲンは人口10万人強の都市ですが劇場が5つもあります。その金銭的運営には企業がスポンサーとして関わっています。その背景には、生活の質が高い都市には質の高い人材が集まってきて、それが企業のハイパフォーマンスにつながるという好循環ループが働くようです(高松さんのクオリティ・ループより)。

面白かったのは、日本は機能的にまちづくりをするが(例えば、線路を最初に引いて、その周りに人が集まるようにまちをデザインしていく=効率性だけを考えてまちをつくっていく)、こちらは人がもともと集まっている場の価値をどうあげていくか(人を場の中心におく)を大切にするということです。

エアランゲンの中心 にあるイベント広場に仮設されたビーチでリラックス。このイベント広場の用途も市民間での議論で決められたそう。


エアランゲンの中心地には車がいないので、道が広く見えて歩く時もとても気楽。


l   市民社会の成熟と行政とのパイプラインの強さ

最初に「教養市民」の存在にも触れましたが、フライブルグで見学に行ったVauban地区はフランスの軍事基地の跡地に住民が参加してつくられた環境地区です。トラム電車の導入から始まり、エネルギー効率の良い環境住宅(Passive housing)、カーシェアリング、クラインガルテン(共同菜園)、コンポスト、公共空間のデザイン等を住民参加で行いました。

地区の歴史を学びながらアイディア出し、だんだんと絞って中心のコンセプトを決めて、どうしたらそれが可能なのか、誰と協力すればいいのかを話し合っていくそうです。計画の実現については行政が全面的にバックアップをし、中心のコンセプトが決定した後は更なる議論と多少の変更を重ねて最終案に仕上げていくようです。

Hongさん曰く、住民は皆議論することに非常に積極的だと話してくれました。また議論が身の丈になるように、実際に車を一人一台所有する際の必要な土地面積や、一人平均あたりの牛肉を消費した際の土地使用面積を実際に計算して、自分たちの行動スタイルを変えることがどう土地利用可能面積や資源消費量に影響を与えるかを考えたりするそうです。

フライブルグのトラム。 


フライブルグのVauban地区の共同菜園。色んな種類の野菜が育てられてました。 


フライブルグのVauban地区のエコハウス。緑がいい感じで心地よかった。


l   日本に持って帰る前に

以前に携わった仕事で、住民参加でマスタープランづくりを進めた経験と比べると、日本にこのまま「やることリスト」を描いて持って帰っても上手くいかない気がしたので、その理由を書き出したのが上記になります。

下記のポイントをどう日本の文脈に置き換えるかが重要な気がします。逆説的に言えば、今まちづくりが上手くいっている自治体は下記ポイントを上手く自分たちの文脈に置き換えることができているのだと思います。

1.    まちのアイデンティティ
2.    コミュニティとして、個人として何に価値を置くのか
3.    市民間の意思決定プロセス
4.    行政の自治力
5.    行政や企業など多様なステークホルダー間での共通目標を設定

2017年5月13日土曜日

修論(Dissertation)

先日修論をようやく出し終えました!!!

自分の興味あるテーマを選択したのでリサーチ過程は(もちろん大変でしたが)どちらかといえば楽しく、知識として学んだこともたくさんありました。しかし、MPAは2年プログラムで修論の締め切りがテスト前にあるので、それがかなり大変になるかと思います。

MPAにおける修論の位置づけ

◎  選択科目
MPAでは修論は必修ではなく、前期履修登録期間に決めなければいけません。修論は1単位( Policy Paperは0.5単位)なので、修論を書かない人はその代わり授業をとります。

決め手としては「修論で深めたいトピックがあるかどうか」「授業で履修したい科目がどれだけあるか」だと思います。

私は書きたいテーマが何となく決まっており、授業で深められそうな科目がなかったので、修論を書くことに決めました。また経験したこともなく、単純にどういうものなのかという興味がありました。あとは、修論を書くプロセスは、アプローチ方法やスケジュール等々、自分で全て決められて自由度が高いのも魅力的でした。私は決められたものをなぞることよりも、自分で試行錯誤する方が性に合っている様だと、LSEで再認識しました。。。


◎  Policy Paperと修論
Policy Paperは0.5単位で6,000ワードなのに対し、修論は1単位で10,000ワードになります。Policy Paperは政策課題を特定、分析して提言等を示すことが求められますが、修論はもう少しアカデミックの色が強くなります。具体的には 政策の礎となっている学説のレビューや、それに対しての示唆の提示、またそれらの根拠として実証的リサーチ(定量、定性は問いません)が求められます。

Policy Paperの方が分量も少なく一見楽に思えますが、リサーチ過程である程度の学説のレビューは必要になるのと、6,000ワードにまとめるのが案外大変そうだと友達を見ていて思いました。このあたりはリサーチクエスチョンの設定方法や性質も関連してきそうなので、迷う人はAcademic AdvisorやTutorに相談したら良いかもしれません。


◎ サポート体制
年間にSeminarが6回あり、相談相手としてはMPA専属のTutorとSupervisor (Academic Advisorと兼任)がいます。詳細に書いたGuidelinesも配布されるので、それをきちんと読めばSeminarの内容はカバーされるように思いました。Seminarは抽象的なガイダンスが多いので、むしろ特定の質問があれば直接Tutor やSupervisorに相談した方が的確なアドバイスがもらえると思います。

Supervisorとの面会の頻度は個人に委ねられており、Supervisorのやる気はまばらです。ちなみに私の担当は、修論のSupervisorをやることを認識していなかったうえ、生徒 / 教えることへの興味がゼロの様に感じました笑。(アポイントメールも2回に1回の返信率)Office Hourに行って相談しても興味が全く無さそうなので、途中から行くのをやめてしまいました。。

その代わりに私はTutorとResearch Assistantとして手伝っていたDrの先生に主に相談していました。友達の中には自分が書くテーマに精通している教授に連絡とって相談に行っていた人もいたので、自分が相談しやすい人を見つけられればSupervisorにこだわる必要はないと思います。


1年間の流れ

◎ 前期
12月1日にProposalの提出をします。主にResearch Question、Literature Review、分析手法の提示が求められ、成績の10%をしめます。この後のテーマの変更はSupervisorとの合意の上となっています。(私は到底無理でしたが)この時点でLiterature Reviewに目処がつき、リサーチ手法のの現実可能性等も把握できていると、後期が分析に集中できて スムーズだと思います。


◎ 冬休み
宿題等はありません。私は日本の政策を扱っていたので、一時帰国した際に関係者に話を聞きに行ったり、データの入手可能性を確認したりしました。フィールドリサーチはMPAの修論では求められていませんが、もし行う場合は(後期がCapstoneで相当忙しくなるので)この冬休みにしておいた方が良いと思います。


◎ 後期
本来は分析に重点を置く期間です。ただ私の場合はLiterature Reviewが全然終わっておらず、またプロポーザルのFeednackにTheory(現学説)へどう貢献できるかの観点が弱いと書かれていたので、最初はそこに重点をおきました。

また前期に全く時間を確保しなかった反省をいかし、友達と週1回一緒にワークする時間を決めて取り組み、週4時間ぐらいは確保していました。しかし、Capstoneが忙しくなった2月後半〜3月前半の1ヶ月は修論にほぼ手をつけられないので、実質後期は1ヶ月半ぐらいしか時間ないと思います。

私の場合はCapstone終了(3月10日)〜修論提出日(4月25日)の1ヶ月半が勝負で、修論の80%をこの期間で取り組んだと言っても過言ではありません。そして最後の2週間ぐらいは夢に中でもリサーチをしてうなされていました笑。


◎ 春休み
平均すると毎日6~7時間ぐらいは修論に取り組んでました。途中想定していたデータが入手不可能になったり、インタビューを進めていくうちに想定していた分析手法が適当でないことがわかったり、修論のテーマにぴったりな新たな学説が見つかりLiterature Reviewの構成を大幅に変えたりと、紆余曲折を経ましたが何とか提出し終えました。

修論は長いので文法の間違えや意味不明な文章が少しでもあると致命的だと思い、Proof Readingを利用しました。本当の締め切り前に一旦書き切る目安を作るのは私の性格にはすごく良かったです。それでも全部は書ききれず85%ぐらいを書ききった状態で提出。結果的に、意味不明な文章を何点か指摘してもらい、また適切な言い回しへ変更されたりして、利用して本当に良かったと思いました。


将来書くかもしれない人へ

◎ 前期の過ごし方が大事
後期はCapstoneにほぼ時間が拘束されるので、前期にどれだけ進められるかで、後期や春休みの過ごし方とプレッシャーが変わってくると思います。修論はテーマ設定等ゼロから構築するために想定より時間がかかるし、必要な情報を洗い出してデータ等の情報の有無が確認できるまで方針を変更せざる可能性が常にあります。よってこのあたりを前期までに固めておくと後期が精神的に楽だし良いアウトプットができると思います。


◎ インタビューのすすめ&読んでもらいたい人を作っておくこと
リサーチメソッドの種類に関係なく(定量的・定性的)、可能であればステークホルダーにインタビューできると良いと思います。私の場合は日本の「地域おこし協力隊」という政策評価モデルに関する論文を書いたのですが、協力隊の方々に実際にインタビューをする機会をいただきました。自分が文献から抽出した問題意識の妥当性、それに関する私の提案が的を得ているかについて意見をいただき、自分が見えていなかった点を指摘いただきました。

また人と話すことで自分の論文の意義や、誰に届けたいのかも明確になり、それが書くモチベーションにもつながりました。せっかく書くなら、学業評価のために書くよりは、自分の論文をもしかしたら活かしてくれる人のために書く方が楽しいですよね。


◎ 根拠の積み重ねが命
アカデミックの強みでもあり弱みでもありますが、自分の主張にどれだけ説得性を持たせられるかが全てだと思います。だから非連続的な(に見える)発見や主張は評価されません。いかに多種多様な角度からの分析とエビデンスを組み合わせることで主張の妥当性を確保できるかが大事です。

何が言いたいかというと、リサーチクエスチョンをかなり限定的にしてスコープを絞らないとエビデンスを積み重ねることが難しく、字数制限もあるので壮大なテーマは書きにくいと思います。

また、あくまで過去の現象・事象を客観的に分析してエッセンスを抽出することに命をかけているので、ぶっとんだ発想や直感的・信念的なものはいくら面白くても根拠を示さないと評価は全くされないでしょう。ビジネスは非連続的な発想や信念的なものも大切にしますが、論文は評価基準が全く違います。(著名人クラスになれば別だと思いますが)。私はこのあたりをきちんと認識しておらず、リサーチクエスチョン選択の段階でTutorと話していて再認識させられました。


◎ 編集の時間を多めに見ておくこと
時間の都合上、分析を進めながら論文を書いていたため、想定シナリオと違う分析結果が出てきたり、また新しいエビデンスを発見したりすると、当初のロジックと変更しなければいけないことが数回ありました。また書いているうちに内容が重複していたり、また流れをスムーズにするためにコンテンツの挿入箇所を変えたり等も必要で、編集は多めに時間を取っておいた方が良いと思います。

私は一回書き上げた時点で約4,000字オーバーだったこともあり、再読しながらの文章校正、エビデンス追加、フォーマット修正に5日ほどかかりました。それでも最後ギリギリだったので、1週間ぐらいは見ておくことをおすすめします。

2017年5月8日月曜日

Capstone Project

久しぶりの更新です。

長文になりますが、将来MPAでCapstoneをするかもしれない向けに、下記にポイントを絞って書きます。

1 スケジュールとアウトプット
2 大変だったこと
3 やって良かったこと
4 学んだこと


CapstoneはMPAの2年生の目玉のプログラムです。10月〜3月までの6ヶ月間をかけてクライアントに与えられたプロジェクトをグループ(4~5人)で遂行します。このグループはMPA Officeが生徒の出したPreferenceを考慮してランダムに割り当てられます。2年目なので大体のチームメンバーは顔見知りのはず。(Dual-Degree Studentsと一緒になった場合はほぼ初対面です)

前期開始時に18のプロジェクトが発表されました。Development、Management、Social Welfare、Finance等の多岐にわたるトピックがあり、パートナーも営利や非営利(国際機関、財団、NGO等)様々です。分析手法も定量的、定性的様々なので、自分の得意不得意に合わせて選択すると良いと思います。

私自身、CapstoneはMPAを選んだ大きな理由の一つでもあり、とても楽しみにしていました。学んだことも多かったですが、その過程で想像以上の困難もありました。とくにグループダイナミクスを理解する最初の数ヶ月と、プレゼンとレポートの締め切り前は大変でした。


スケジュールとアウトプット
6ヶ月間で求められているアウトプットはクライアントへのプレゼンテーションとLSEに提出するレポート(15,000 words)です。内容に関しては、事前にMPA Officeがクライアントと調整しているので、無理難題はないはず。ただ、データの入手可能性によってリサーチの難航度は大幅に変わるので、事前のプレゼンテーション時に確認しておいた方が良いと思います。

私のグループはクライアントに最初に挨拶に行き、その後は1つのステージが終わる毎にプレゼンをしました。よって、パートプレゼン3回+最終プレゼン1回でした。日常はメールでやりとりです。

グループミーティングは最初の2ヶ月は週1回2−3時間のミーティングが基本でしたが、途中からは議論することも増えてきたので週2回に増やしました。冬休みはタスクを割り振りましたが、結局皆忙しくてあまり進められず、休み明けに本格的に再開。

1月下旬から3月9日の提出日までは自分の普段の勉強時間の7割はCapstoneにとられました。他の教科や修論に割く時間が圧倒的に少なくなったので、それを想定して予定を組んでおいた方が良いです。

レポートは2月頭から本格的に書き始めました。まだ分析も終了していなかったので、レポート班とリサーチ班に分かれました。また、ネイティブがいなかったので、Proof Readingに3月1日に提出。結果的にProof Reading前に最低限のレベルまで仕上げ、残りの1週間で何度も読み直し、エビデンスを集めたり等してクオリティーをあげることができました。

それでも提出前日は図書館に朝3時すぎまで残ることになりました泣。他のグループも沢山いたので、最後はそうなるみたいです笑。

大変だったこと
班によって苦労するポイントが異なりますが(グループ内、クライアントとの関係、Supervisorとの関係等)、私の班はグループ内のコミュニケーションが一番大変でした。とくに1年生時のグループワークと比較すると、スコープが広く抽象的議論が多かったのが大きな要因だった気がしています。

昨年の2年生からも「Capstoneはグループが全て」と言われていましたが、本当にその通り。前述のとおりランダムに割り当てられるので事前に仕組むことはほぼ不可能で「運」です。ただ友達とも話していて、コミュニケーションで問題ないグループは皆無だったので、何か起こると思って望んだ方が良いかもしれません。

以下にポイントだと思うことを書いておきました!

◎ 違う意見をどう合意にもっていくか:
私の班はとことん議論しましたが、合意に辿りつくまでの時間と労力を必要以上に浪費していた気がします。しかも私の班は気性が激しいメンバーもいたためか笑、議論のたびにすごいエネルギーを消費していました。家に到着するとぐったり。

その要因としては議論が途中で迷子になったり、また結論が出ていないのに次の議題を話していたことだったので、途中からはホワイトボードを使ったり、またパワーポイントやワードに意見を事前にまとめて議論の可視化に努めていました。

◎ フィードバック(FB)の方法:
「相手が聞く気がおきるフィードバックの伝え方ができるか?」これが想定より難しかったです。例えば攻撃的なFBを繰り返す人がいると、受ける側は防御のために自動的に聞くことをシャットダウンしてしまったり。あとは、個人の中で無意識に「この人の意見は意味あるけど、あの人の意見は意味ない」という姿勢ができてしまって、ある人がいくらFBをしても全然反映してもらえなかったり。等々。いろいろありました。

これを放っておくとグループワークが不可能になります。「仲介役(皆の信頼を得ている人)」に自分がなった場合は、皆の意見を平等に拾って皆が同じテーブルについている感覚を保てるようにすることが重要です。他の人が「仲介役」だと思った場合は、その人にお願いすると良いと思います。

真摯に丁寧に他の人の意見に向き合うことができるのは能力なのだと実感。

◎ クライアントとのコミュニケーション:
クライアントがCapstoneに慣れているか(複数回目もいれば初めてもいる)はプロジェクトのスムーズさにとても影響します。特に相手が初めての場合はお互い手探りなので、彼らの指示を100%信じずに、小さな疑問でもぶつけた方が良いです。

私の班は、Terms of Reference (プロジェクト概要と目的)のゴール設定が曖昧なところがあり、捉え方によっては6ヶ月以内では達成不可能だと判断し、最初に2週間ほどかけて認識を合わせました。結局Terms of Referenceはクライアントと合意の上で最後に書き直しました。

また最後に思ったのは、クライアントのリソース(他の部署や外との関係性)をもっと活用すればよかったということです。クライアントが比較的大きな組織で横の連携が強い訳ではなかったので、こちらから特定の組織や人をお願いしない限りはリーチするのが難しかったです。

◎ フリーライダー問題:
私の班はありませんでしたが、何度か他のグループで聞きました。大切なのはフリーライダーが出たときにどう対処するのかを最初に決めることが大事だったと話していました。(ひどい場合はMPA Officeに報告する等)


やって良かったこと
◎ Supervisorの活用:
各グループにSupervisorが割り当てられます。学校側の責任者です。彼らの役割は明確に定義されていないので、どう活用するかはグループ次第で、頻繁に干渉してくるSupervisorもいれば、ほぼ放置もあります笑。

私たちのグループは各プレゼン前にPPTを送付してFBをもらったり、レポートへのFBをもらったり、リサーチの方向性を相談したりしました。頼んだことを拒否することはしないと思うので要所要所上手く活用すればいいと思います。

◎ Field Interviews:
Literature Reviewが主のプロジェクトだったのですが、私たちが抽出した課題やそれに対する提案が的を得ているか確かめるべく、途中でクライアントにも相談してステークホルダーにインタビューを4件のみ実施しました。結果、課題意識の妥当性が確かめられられ、また想定できてなかった実行プロセスでの問題が明らかになったのでよかったです。

◎ お互いへのフィードバック:
レポートとプレゼンが終わり皆でパブに行ったときに、自然とプロジェクトを振り返る流れになりました。そのときにメンバーの一人が「Yukieは周りにいる人をPositiveな気持ちにさせ、一緒にやりたいと思わせることができる。それって素晴らしいことよ。そして、どの人の意見にも真摯に向き合うことができるのはすばらしい」とフィードバックをくれました。それを発端に、それぞれへのフィードバックタイムが始まりました。

自分の強みって自分には見えにくく、また外国でのワークは日本と環境が違うので自分がどう貢献できるのか悩んだことが多かったので、すごく嬉しく救われました。何度も揉めたにも関わらず、ポジティブなフェードバックを最後にくれる 彼女は素晴しかったです。


学んだこと
◎ InputとOutputのイメージを最初にもつこと
「個人でどれだけの時間/週を確保できるのか、それでプロジェクトの目的が達成可能か」は最初にグループで話し合っておくと良いと思います。私は「できるところまでやろうよ」という意識が強く、費用対効果の意識が薄くなりがちなので、とても勉強になりました。最初から不可能な目的設定はクライアントと交渉する必要があります。(彼らも私たちのスケジュールは知らないので)

◎ Group Workの姿勢
Capstoneは今までのMPAのどのプロジェクトより「Group Work」でした。お互いにフィードバックを重ねアウトプットの質を高めることができたと思います。どこまで相手のワークに干渉するかは難しいと思うのですが、私のグループは1人すごくアウトプットの質にこだわるメンバーがいて(3〜4回同じパートを書き直すことも)、彼女がとことんフィードバックしあう環境を整えてくれたと思います。

◎ Technical Knowledge
テーマであった大学と企業の技術移転に関するトピックと、Randomised Control Trials (RCTs)については詳しくなりました。特にRCTsはEmpirical AnalysisではGolden Rule的な手法なので、今後リサーチ分野の仕事に就けば目にすることも多そうで、今回きちんと勉強できてよかったです。

2017年3月26日日曜日

週末にホームステイ@Bungay

3月中旬にHOST UKというボランティア団体をとおしてイギリスの田舎に2泊3日(金曜午後〜日曜午後)でホームステイしてきました。LSEにいながらイギリス人との交流が少ないので彼らの暮らし方やライフスタイルは興味がありました。

International Studentsを対象に、日帰りまたは2泊3日のホームステイがコーディネートされてます。アプリケーションプロセスで興味にあったホストをコーディネートしてくれます。私は田舎や自然が好きと回答したのでBungayというLondonから列車を北東に2時間走らせた場所が滞在先になりました。

幸いにも雨は2泊3日中ほぼ降らず、曇りのち時々晴れでした。まち全体が古き良きレンガと石づくりの文化を保存していて歴史を感じさせる街並みでした。


何世紀にもわたり教会だった建物の敷地には桜がとても綺麗に咲いていました(今はコミュニティセンター)。17世紀に建てられたお墓は時の流れを感じさせます。(保存に莫大なお金がかかるそうですがそれ以上の価値はある気がします。)



ホームステイはアメリカ人の女の子も一緒で(ロンドンの学生)、彼女も自然や植物に興味があるということで土曜日はNature Conservation WetlandとConservation Forestsに連れていってもらいました。ホストマザーのお友達のおじいちゃんも一緒で地形や植物の解説つきでした!

湿地に横たわり生きている木の形とコケから感じる年月。

異国で桜を発見すると懐かしい気持ちに。

芝生と落ち葉の絨毯が醸し出す雰囲気は絶妙。

ホームステイは久々の贅沢な時間でした。特にここ1ヶ月はLSEの大きなグループプロジェクトで常に追われている感じだったからですが、久しぶりに人間らしい文化的な過ごし方をした気がしました。PCを持っていかない決断は正解でした。

まず夕飯の前からワインを飲みながら、お互いの国こと、普段の生活のこと、興味あること等を1時間ぐらい話し、そのあとにダイニングに移動して2時間ぐらいまたゆったりと食卓を囲んで話しました。家族のこと、お互いの国の教育システムや政治システムから今まで行った旅行の話しなど純粋に会話を楽しみました。

夕食後もリビングに移動して久々のboard game。

祖父母の世代から受け継がれたアンティークが家中(ダイニング、寝室、階段、バスルームにも)に置かれており、普段とは全く違うリラックスするための「家」という空間も非常に癒してくれた気がしました。消耗品ではなく、世代を超えて受け継ぐアンティークを揃える姿勢が素敵。本物は年月を超えても色あせないなぁと。

ホストマザーはおそらく70代で、1人でこの家に住んでいたのですが、私たちのような孫のような世代を心を込めてもてなしてくれたことに感謝でした。そして日本やアメリカの事情にもすごく興味津々で、 いつになっても衰えない探究心&勉強熱心な姿勢にも教わること多かった。

余生はこんなおばあちゃになりたいなぁ、、と自分の余生に新たなイメージが加わりました。




2017年2月2日木曜日

英語のBreakthroughきたー!

ロンドンにきた2015年の10月に「言語の壁にぶつかって思うこと」という記事を書きました。それから1年経った夏休みが明けた頃に「きたかも」と思いました。

ロンドン滞在の3ヶ月目ぐらいに少し慣れてきて自分の英語レベルが一段あがった気がしたのですが、それからはあまり語学力が伸びている感じがしませんでした。

しかし昨年夏のインドでの2ヶ月のインターンから帰ってきて、格段に語学力があがった気がしていました。多少の荒療治は有効ですね。

前回のエントリー時からどう変わったかを具体的に書いてみます。

◯ 読み:同じ文献読むのにネイティブの3倍〜4倍かかる。

→文献を読む時に引く辞書の回数が格段に減少し(1つのペーパーにつき数回ぐらい)、かかる時間が相当短くなりました。もちろん知らないボキャブラリーは出てきますが推測しながら読んでも支障ないぐらいになりました。

◯ 書き:エッセイを書く際のフォーマルな単語は辞書をひかなければいけない

→(アカデミックEssayの語彙力を伸ばす余地は相当ありますが)来た当初に比べ辞書をひかなくとも自分の言いたい主張を適切な言葉で書けるようになりました。わかりやすい変化としては、Essayに「?」をつけられることや「Proof ReadingをNativeにしてもらいなさい(きちんとしなさい)」等のコメントがなくなりました笑。(最初のEssayでは実はつけられていた。)

◯ 聞く:講義の理解は8割。途中でクラスメイトから飛んでくる質問内容の理解は4〜5割。普通の会話の理解は7割。訛りのある英語の理解は0〜4割。

→講義と普通の会話の理解度は9割〜9.5割。クラスメイトの質問は7割。訛りのある英語も慣れてきて8~9割は聞ける気がします。そして聞きとれない時に聞き返すことが普通に出来るようになりました。最初は聞きとれない自分の語学力の低さ少し負い目に感じていたのですが、今は大分聞き取れるようになったからか、その負い目がなくなりました。

◯ 話す:自分の思っていることはニュアンスまで大体伝えられる。ネイティブ同士の会話に対等に参加するのはかなり難しい。話すスキルの不安よりも理解力の不安から発言をためらうことが多い。

→今でもネイティブだけが集まると会話への参加は大分頑張らないといけないですが、話の途中で迷うことがほぼ無くなったので、会話参加への抵抗が格段に少なくなりました。(=理解力の不安が無くなった)

◯ 補足:電話のコミュニケーションが出来るようになったこと笑。電話の英語は、表情やジェスチャーがない&雑音があり相当難易度が高くロンドンに来た当初は本当に苦手だったのですが、今はその苦手意識がほぼなくなりました。

「ある日いきなり聞き取れるようになる」とよく言われますが、私は結局滞在から約1年かかりました。もちろん上記のように今でも100%ではないですが、階段を1段登った気はしました。

英語に悩む日本人は多いと思いますが、「諦めないで続けていればいつかBreakthroughが来る」と信じられる励みになったらと思い書きました。

2017年1月31日火曜日

Inclusive Prosperity

今日はLSEのPublic Lectureでシンガポール副大統領のTharman Shanmugaratnamの講演を聞いてきました。LSEの卒業生らしいです。

簡単にまとめを書いたのでもしよかったら。

簡単な感想:内容がとても濃かった。自分の言葉で話している印象で、話し方が落ち着いていて非常に分かりやすかった。あとは主張が理論、彼の実践からの学び、信念が上手く組み合わされていて説得力がありました。

あとは参考までにここに彼の2015年当時のインタビューがあり、コアの主張は変わってないので興味ある方はぜひ。

<Convergence>
  • Convergence of living standard has been expected over decades especially between developing and developed countries. It is generally measured by productivity level or income level of countries. However, these indicators over decades demonstrate that our expectation is not always the case. 
  • For example, China’s productivity used to be 1/25 of that of USA. 30 years ago, however, it is currently 1/4, which is a successful case. On the contrary, India and Latin American countries haven’t been successful in catching up developed countries in these indicators.

<Social Mobility>
  • Other important indicator is social mobility, which illustrates rather mobility of social status (e.g. income level, education level, gender, ethnicity, etc) than physical mobility. This has become very low recently.
  • For example, it’s not common anymore that income of children surpasses that of parents.
  • When social mobility becames low, the identity of ‘we’ that was formed after WW2 is forced to be modified to ‘us’ and ‘them’. We never interact across social status.
  • This actually generates elimination, exclusiveness and anti-multi culturalism.

<Technology and Dispersion>
  • Although globalism seems the centre issue of exclusiveness/elimination, the impact of technology is getting in-negligible.
  • It’s not technology that brings about issues, but how we react. This is usually determined by domestic policies including both national and local levels.
  • Frankly speaking, dispersion within countries is generated by domestic policies.
  • In order to shrink this dispersion, we need a social democratic model, which required different approach from the conventional way of redistribution. We need ‘regeneration’.

<Focus Points>
  • Education: Egalitarian education actually results in in-egalitarian results. Bespoke education will be more in demand for the future. We need of bright professors in universities, of course.
  • Innovation and Technology: To adapt yourself to innovative and technological society (or for society to adapt the trend), continuous leaning is critical. Education is not only for young people, rather for everyone (including old people). A problem is how we provide education for everyone. Especially, in the field of technology, practice is more important compared to the conventional education. One idea to put it into practice is community learning.
  • Social Partnership: They implement quite special housing scheme. This policy is original to Singapore and focuses on neighbourhood community and mix of ethnicity (have quota for ethnicity). There are more advantages for this policy up until now.
  • Trade Openness: It is actually driven from supply side rather than demand side. In order to take advantage of trade openness, we have to keep improving productivity. Collective responsibility makes law being enforced into practice. An essential core is personal and family responsibility, which is a small piece in the society but forms a social market when they’re compounded. We have to contribute to public goods through individual responsibility.

<Other points>
  • One of the mechanisms to trigger ‘U.S. Election/Brexit’ is that while benefits from globalisation are well provisioned, its cost is concentrated on only certain places.
  • Finance sectors has been overwhelming the economics, but now it has been gradually overtaken by technology sectors. A lot of jobs in the back office of financial sector are being substituted by technology.
  • Some African countries are stagnated in the vicious cycle of development, partly sue to abundant natural resource (=resource curse). In order to combat the situation, they should implement inter-generational view so that they plan the use of the resources over generation for the future development. Furthermore, transparent governance should be ensured.
  • Friendship and interaction are critical for multi-culturalism.

追記:こちらからPodcastを聞くことができます!

2017年1月22日日曜日

Technology × Idea

今日は縁がありRoyal College of Artの展覧会に行ってきました。

Royal College of ArtはPostgraduate以上を対象とした美術大学@South Kensingtonにです。Art&Design分野における世界ランキングは2015年から2年間連続で1位を獲得している名門美術大学です。

今回の展覧会は在籍学生の作品の途中経過展示会でした。

「Art」というより「Art & Design」でした。「これできたら面白いよね、画期的だよね」というアイディアにArtやTechnologyの観点から取り組む感じです。システムの構築を考える作品もあればプロダクトを提案する作品もあり、何のデザインにするかは幅広いです。

Social Businessは社会課題をBusinessを使って解決しようとする試みですが、そのSocial Art, Social Design, Social Technologyという印象。ただ展覧会全体としては社会課題に限らないIssueやDesireを扱っていました。

分かりやすいプロジェクト例をあげるとこんな感じ。

  • 家庭からの食品廃棄の問題:
    主な原因は、買いすぎと食材管理。携帯アプリをスーパーと連携して開発。買い物レシートをアプリに読み込むことで、購入食材とその消費期限を登録。アプリが消費期限が近い食材を知らせてくれ、それを使った調理メニューと買うべき食材を提示してくれる。

  • 糖分の超過摂取:
    肥満は深刻な問題。スプーンの形によって同種同量のスイーツを食べてもより甘く感じることができる。(理由は良くわからず。舌の細胞の位置の問題なのかな??)なので適切なサイズと形のスプーンを使うことでより甘く感じられるので糖分摂取が押さえられる。

  • 繊維開発:
    これはヒートテックをはじめファストファッション業界で技術の恩恵を感じているところですが、繊維の素材や編み方の開発で収縮機能の大幅な向上が可能。なので将来的にはOne fits all sizeの服が開発される。

他にも考えたこともないような面白いプロジェクトたっくさんありました!!プロダクトデザインや展示方法もおしゃれで視覚的に非常に勉強になりました。

こういう思考方法は今後ますます潮流になっていくだろうと思います。今回の作品はArt&Designの観点からでしたが、これがビジネスや政策分野と結びついたら、考えたことないような面白い取り組み生まれてきそう。