2016年7月10日日曜日

長い道のり

今日はTata ChemicalのNature Conservationの現場を見てきました。自然の保全と生物多様性の保全をどうやって色んな人が協力して行うかという分野。前職に関係の深い分野でとても楽しかった。植物の成り立ちや動物の習性って想像するだけでワクワクします。

全体をとおして気づかされたこと。
○ 教育(Raising Awareness)の大切さ
これはCSR全体を通していえること。教育を一番最初のプロセスに組み込んでおり重点を置いていることがわかる。「なぜ自然保全の活動が大切のなのか」「現状と問題は何なのか」「自分たちがそれに向けて何をすべきなのか」というのを丁寧に学ぶ機会を設けているようです。

一番驚いたのはTata Chemical@Mthapurの社員が少なくとも月1回は生物多様性を学ぶ機会があって、それをベースに地元の学校へ行き出張授業を行ったり、ボランティア活動を牽引しているということ。日本ではCSR担当者の例は聞いたことあったけど一般の社員の例は聞いたことなかったので驚きました。聞き手が伝え手になっていくことは、その人の勉強にもなるし、気持ち的にも責任感とやり甲斐が増すのでとても良い取り組みだなと思いました。時間はかかるけどコツコツやるしかないのだろうなと。

○ 感情に訴えること
2004年からTata Chemicalが行っている取り組みの中にWhale Shark(ジンベイザメ)の保全がありました。Whale Sharkは世界で一番大きな魚だそうで、乱獲等も原因の一つとなりワシントン条約の付属書Ⅱに入っているそう。最高級のフカヒレらしい。Gujarat州でも生息が確認されており、その保全のために漁師や沿岸住民への保全キャンペーンから始めたそうです。

面白かったのは、Whale SharkをPride of Gujaratとブランド化し、保全することに「誇り」を持たせたこと。あとは沿岸で見られる妊娠中のWhale Sharkを里帰りした妊婦に例え、故郷に帰ってきた娘を大事にするようなストーリーを組み立てたり、ヒンドゥ教の宗教リーダーと連携して信者に訴えかけてもらったりと、大衆の感情に訴えかけるキャンペーンを繰り広げた様。それが成功した結果、今はプロジェクトは調査やモニタリング等、次の段階の段階へ移っているということでした。土地の人に何が響くのかを上手く活用している例でした。

あとは活動現場に興味ある人向け。純粋に見ていて一番楽しかった現場。

○ 海ガメの保全
MithapurにはGreen TurtleとOlive Ridleyという2種類の亀が生息しているそうですが、人による乱獲( 肉、血、そして卵が健康に良いと信じられていた)、犬による卵の略奪、海面レベルの上昇による沿岸の侵食(卵を海にはゆるやかな海岸斜面が必要だそう)、植物外来種の激増とゴミの投げ捨てによる沿岸環境の変化等の理由から、個体数が激減してしまいインドでは絶滅危惧種に入れられているそう。そこでTCSRDでは人々の教育、海岸の清掃、個体数のモニタリング等を通して海ガメの保全を推進しているそうです。

産卵の形跡がある度に漁師から連絡をもらい、TCSRDのスタッフがモニタリングしにいきます。今回は昨晩に産卵したと思われる形跡を見に行きました。写真は産卵場所だと思われる箇所。臭いにより卵を探りに来たと思われる犬の足跡も残ってました。カメは頭が良いらしく、卵を掘り当てられないように臭いをいろんなところに散布するらしいです。あと卵は地中深くに埋められて2ヶ月後に赤ちゃんが出てくるらしいです。


こちらはカメが産卵場所を求めてはいずりまわった形跡。毎回この距離やどこを歩いたかを記録しています。すごい距離。しかもカメは約200kgらしく、その巨体が海岸を彷徨っていたと思うと居合わせてみたいと興味が湧きました。

○ マングローブの植林
こちらはRukshmani Creek siteでのマングローブの植林。もともとはマングローブが生えていたらしいのですが、干ばつの影響と人による燃料確保のための乱伐による無くなってしまったらしく、その間にモンスーンシーズンにはびこるentromorpha algaeと呼ばれるマングローブの 種の成長を妨げるはびこってしまったらしいです。しかも写真からわかる通り、ゴミだらけ。


そこで、生物の住処(小さな魚の住処の提供)の提供、そして津波や高潮の軽減を目的にした海岸林の役目の提供のために2009年から植林を始めたようです。5年ぐらいは高潮の影響でマングローグが海にもぐってしまい花と種子をつけるのが難しく繁殖が遅かったらしいのですが、最近ようやく大きくなってきて勝手に種を落として勝手に繁殖し始めたとのことです。

この写真の白いつぶは全てカニです。穴をほって中に住んでます。

近づくとこんな感じです。マングローブを植え始めてから観察されるようになったと喜んでました。

けれども問題は山積みだそうで、まずはこれらのゴミ。高潮でマングローブまで波がくるとゴミがマングローブのあたりまで流されてくるらしいです。

あとは漁師が高潮時に気づかずに船をマングローブの上に停泊して波が引いたときに傷つけてしまったり、あとは網がマングローブに引っかかり、そのままネットにマングローブがもってかれてしまうことがあるそうです。住民の理解を得ながら進めていく長い長いプロセスです。

おまけ:12世紀前後に建てられたとされる近くにあるヒンドゥー今日のRukmini Templeに寄ってきました。近いうちにDwarkaのTempleも行く予定なので楽しみ。




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