2016年7月11日月曜日

Brexit

6月24日に行われたBrexitの国民投票から2週間強が経ち、日本でも参議院選挙の先にある憲法改正の国民投票の話が出てきました。今更感はありますが、Brexitの国民投票の時に自分がロンドンにいて周りの反応を見れたのはすごく貴重な経験であったので、その時に感じたこと書き留めておきます。

国民投票の時に私はLSEの寮に住んでいたので幸いにもヨーロッパ大陸諸国の人達と話す機会がありました。あとは偶然ロンドンのTime & TalentsというNGOでフィールドワークの手伝いをしており、訪問インタビューや路上インタビューをとおしてローカルの人と話す機会もありました。

選挙結果がLeaveと決まった日の朝。LSEの友達の反応はほぼ100%といい、「信じられない、何て選択をUK国民はしてしまったんだ!」という反応。大きな理由としては「第二次世界大戦後からのヨーロッパのSolidarity(結合)の歴史の針を逆に戻してしまった。」「今までEU加盟国がヨーロッパにはびこる諸問題(経済や難民等)を解決しようと努力してきたことが水の泡だ」「他の国々が追随し始めたらEUにとっては危機」ということでした。個人的に驚いたのは、ドイツ人、フランス人等がEU加盟国(運命共同体のような)の意識を相当強く持っていること、そして選挙後の数日間は会えば政治の話題をオープンに真剣に議論し続ける土壌でした。

なぜ離脱派が勝ったのか?

(1)論点のすり替え
色々な人と話していて個人的に一番納得いったのは、「UKはEUに残留するべきか?離脱するべきか?」という問われるはずの論点が、「現政府のパフォーマンスに満足しているか?」という問いに対して投票してしまった人が多いのではということ。つまり「失業、NHSサービスが満足に受けられないこと等への不満」が本来の順序なら、現政府の政策が妥当であるかがまず問われるべきなのに、その問いを飛ばしてEUに残留するのが良いのかという形で問われてしまったこと。

移民を少し詳細にみると、イギリスは(EU域内での移動の自由を保障している)「シェンゲン協定」に入っておらず、EUからの移民は入国管理がされています。また2015年のNon-British移民373,000のうち約半数の188,000人はEU域外から来ています。なのでEUに加盟していることが問題というよりも、入国管理を許した移民のインパクトを想定してパブリックサービスきちんと提供できていない現政府の政策の方がまずは問われるべきかなと思います。

UKへの移民は確かに年々増えており2015年は過去最高の330,000人でした。そして私がした路上インタビューや訪問インタビューでも移民に対する違和感は住民からあがっていました。「近所を歩いていても英語がほとんど聞こえてこず、隣人と英語でコミュニケーションがとれない」、「税金をきちんと納めているのにNHSサービスが満足に受けられない(供給不足)」、あとは感情的に聞こえますが「移民にばかりサービスをつくり(言語教育等)、イギリス国民である自分たちには(今の状況に対して)何のサービスもつくられない。Unfairだ」、「仕事獲得が(移民のせいで)難しくなった」「公共住宅の倍率が(移民のせいで)あがった」等々。なので肌感覚的に、移民の増加に対して相当の違和感を現地の人は感じていたのは確かでした。

ただその解決をEU離脱に求めたことは課題とそれに対する解決策が議論がしつくされなかった印象です。また個人的にはイギリスというヨーロッパの経済を牽引する国が、自分たちの状況だけを考えヨーロッパ各国の共同の課題に立ち向かおうとする協力体制を崩してしまったことが非常に残念でした。正直イギリス国民に失望しました。

ドイツ人の友達が述べていた意見も印象的で、今回のUKのEU離脱というのはある意味EUという組織が上手くいっていない証拠。だから今回の結果を踏まえたうえでEUに残った国々は未来に向かった建設的な対話をするべきだというものでした。

(2)キャンペーンの方法
イギリス人の子が話していたのは残留派のキャンペーンが失敗だったのではないかとうこと。なぜならEU離脱をした場合のリスクや損失を訴えかけていたけれど、残留した場合の人々への利益が見えにくかったから。ただEUに残留した時に現状維持(つまり今の不満)だと明らかに現状が解決しないので、EU残留でも今の問題をこういう風に解決できる、長期的にはこんな利益があるという風にしたらよかったのかな。それに対し、離脱キャンペーンは論理は間違っていたかもしれないけど、利益を強調するキャンペーンだったこと、あとは昔の大英帝国を彷彿させるようなコピー「Get our grourious independence back」的なものを感情に訴えかけることに成功したのだろうなと思います。

あとはキャンペーンという雰囲気に飲み込まれない(キャンペーン全てが悪いわけではなく、キャンペーンの主張の良し悪しを見分けられるということ)Good Knowledgeを身につけているかは、結局は国民の教育レベルによってしまうと思います。そうするとイギリスとして今までの教育のあり方や社会のあり方を見直す機会にもなるのかなと思いました。

国民投票というと国民の総意なので聞こえは良いけれど、正直こわいなと思ったのが今回のBrexitの選挙でした。国民は世界情勢含め大きな視野で見えている人ばかりではないからです。だからこそ、国民投票の実施を意思決定をする政治家は本当に重要なポジションにいるし(もしかすると政治家や官僚エリートで決めたことが未来にとって賢明な議題もあるかもしれない)、私はきちんと大きい視野で長いスパンで物事を判断できる国民の一人でありたいと思いました。

参考サイト:
「移民・難民の大量受け入れに反発してイギリスがEU離脱した」の「ウソ」:http://www.huffingtonpost.jp/naoko-hashimoto/lie_eu_b_10868404.html

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